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April 11, 2005

名誉なんて、いらない!…って言えない

4月11日『眠られぬ夜のために』

「修養によってわずかに謙遜の徳を身につけた人は、名誉の表彰を辞退したりするが、内心はやはりそれをうれしいと思い、それが与えられない時は、物足らなく感じる。
もっと謙遜な人は、自分の真の幸福をまもる用心から、それを避ける。
さらに謙遜な人は、そのようなものにもはや心を動かされないので、本当に無関心である。」(岩波文庫版:草間・大和訳)

わたしも、一度だけ、地位も名誉もいらない!と思ったことがある。
イエスの「求めなさい、そうすれば与えられます」という言葉に出会ったとき、つまり、「あなたが生きていることは無意味じゃないよ、あきらめないで、考え続けて!」とイエスから言われたときである。
ああ、その答えが分かるなら、お金も名誉も、なんにもいらない、と思った。そのときは、本当に。

ま、あれからさほど時間は経っていないんだけれどさ、あっさり名誉欲に囚われる日々ですよ、ええ。弱いっすから。
NIKKOUは、本を作る仕事をしているんだけれど、自分が作った本は、売れてほしいな、と思います。
売れて、「あ、その本、わたしが作ったの」って言いたいさ。社内でも、有能な編集者だ、って一目置かれたいです。あさましいです、ええ。

だから、今日のヒルティ爺の忠告は、わからなくもないけれど、ちょっと反発もあったりする。
なので今日は、私自身のことではなく、いま思い出した知人のことを書きたい。

一年前に会ったきりの人である。
わたしより、ちょっとだけ年上の男の人で、かわいい恋人と一緒だった。クリスチャンである。
今をときめくIT企業に勤めていた。でももう、やめちゃった、と思う。

「儲かるんだよね~」と彼は言っていた。
しかも、優秀なのか、いい仕事をどんどん回してもらえるんだそうだ。仕事をすればするほど、お金が入るし、お金が入れば入るほど、仕事が回ってくる。
こんなご時勢に、そんな業界があるんだ~自慢話かよ~と、最初のころは、そう思って聞いていた。

「でも、やめることにした。」と、彼は表情も変えずに言った。

続けて、言う。
「実を言うとね、すごい楽なんだよ。なんにも考えないで、ひたすら働いて、どんどんお金が入ってくる。たぶん、このまま続けていれば、もっと責任のあるポストにも着くようになると思うよ。でもさ、神様がオレに求めていることって、そうじゃないと思って。」
「やめてどうするの?」と、わたしはちょっと意地悪な気持ちで聞いてみた。
「祈るよ。」と言われた。
「神様がなにをオレに求めているのか、一度、会社をやめて、神様に聞いてみようと思うんだ。」

ここまでは、敬虔なクリスチャン青年のえらいお話。
でも、NIKKOUにとって面白かったのは、ここからである。

彼の上司が、辞めると聞いて怒った、というのである。
仕事もうまく行っているのに、なにが不満なのか、と。
そして、給料を上げてやる、忙しいなら、部下を増やしてやろう、と言ったのだそうだ。
適当にごまかせなくて、彼は、正直に言ったそうである。「僕はクリスチャンなので、神様中心に、人生を考えたいんです。」と。
そしたら、上司は、こう言ったんだそうだ。

「キリスト教を学ぶのは、いいことだ。聖書も若者には有益だと思う。だけど、…」


               「信じるな。」


「なぜ!?」とたずねる彼に、上司は言った。「人間、一番大事なのは、自分だ。自分の成功を信じて、一生懸命がんばるから、人生には意義があるんだろう。でも君の話を聞いていると、キリスト教はそうじゃない気がする。不自然だ。」
ふぅむ、なるほど。と、NIKKOUはうかつにも、思ってしまいました。
いや、一理あると思います。

地位も名誉もいらない。お金もいらない。ただ、神様が自分に何を求めているか、知りたい、という彼の考え方や、
ヒルティをはじめとする、イエスキリストを信じた先輩たちが、この世の名誉には無関心でありたい、と願ったこと、
そしてなにより、イエス自身が、「金持ちの青年」に言ったという言葉、
「もし完全になりたいのなら、行って持ち物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に富を積むことになる。それから、わたしに従いなさい。」
つまり、なにもかも捨てて、自分に従って来い!という命令は、
やっぱり、普通はなかなか理解しがたいだろうな、と思う。
わたしの知人の上司も、びっくりしただろうし、だから腹も立てたんだろうと思う。
「豊かな生活をしたい」と願ってなにがわるい、生活の苦労もしないで成人した甘ちゃんめが、だからクリスチャン人口は増えないんだ、無理があるんだ、って思ったかもしれない。いや、そう思われても不思議じゃない。

そして、NIKKOUも今、名誉欲てんこもりだから、お利巧さんクリスチャンぶって、「地位も名誉もいらないなんて、すばらしい、わたしもそうなりたい」とは言えないのだ。正直言って。

だからこそ、強く思う。

そうして「儲かる」仕事から決別した彼の、行く末が知りたい。
その「行く末」が決定するのは、10年や20年先じゃないかもしれない。もぅ、すっごく長い時間がかかるかもしれない。でも、彼は、一生懸命聖書を読んで、自分の頭で考えて、「神様は、こんなことを、自分に望んでない」って分かったんだよね。ならば、彼のその、「賭け」みたいな選択、神様に賭けてみよう、という決意の、その果てを、わたしは知りたい。

そして、彼のためでなく、自分のために、祈りたい。
神様、彼に、あなたのみこころをお示しください、彼があやまたず、あなたの示す道を選び取り、進み行くことができますように。もしそれが、本当にあなたのみこころであれば、わたしにも、イエス様の生きかたの本当の意味が分かるような気がするんです。

今、彼に連絡を取るのは、実は簡単だ。
今日ヒルティの文章を読んで彼のことを思い出したのも、なんかの導きかもしれないと思う。

というわけで、今日は結論らしい結論のない記事になっちゃったけど、NIKKKOUも模索中、ということでおゆるしください。

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Comments

とても正直だと思う。

おれは、今は要らないと思ってるけど、仮に月収ウン十万の仕事に就いたとして、仕事もすごくできるような立場になったとしたら、思いは変わるかもしれない。いや、変わるだろうね。

だからこそってのも変な話だけど、今はこれから十数万もらってこのぼろマンションでできるだけ一生を過ごしたいと思ってるのも事実です。

おれには神観念が無いからとても理解に苦しむところはあるけど、欲望に縛られ、苦しむことはよくある。それは名誉とか地位とかカネとかではないけど、あ、名誉を求めてないってのはウソだ、とにかくこれ以上あらゆる欲望(煩悩)を増やしたくないんだ。たぶん、たったそれだけのことだと思うけど。

Posted by: 今瞬 | April 15, 2005 at 11:32 PM

おっしゃるとおり、欲には苦しめられる。
金銭欲なんかは、まあなんとかなるにしても、
名誉欲、つまり人から評価されたい、という思いはわたしも強いと思います。
仕事の上での評価ももちろんだけど、もっといろいろなことで。

2年ほど前、『チソン、愛してるよ』という韓国の女の子のエッセイ集を読みました。
彼女はものすごい美人さんだったのだけど、交通事故でぼろぼろになってしまうのだ。本には写真も入っているんだけど、うー…ん、これはキツイなあ、と正直思いました。
わたしも一応妙齢(笑)の女性なので、綺麗だといわれれば単純にうれしいし、顔がぼろぼろになってでも生きてゆけるか、っていうか、人の前に出てゆけるか、と思うと、たぶんものすごく怖いと思う。特に、それまでの顔を知っている人に対してはね。今まで親しくしてきた人たちだって、何人かはきっと失うと思う。目鼻が溶けてしまっている女性を直視するのは、相手もつらいと思うし。
チソンは、それこそ、信仰をもって乗り越えて人前にも出られるようになるわけだけど、それまでの葛藤っていうのはものすごかったと思う。
でも、自分にだって、いつ襲い掛かってきてもおかしくない試練なわけだし(そんなの考えただけで、いやだけどね)、今はむずかしいとしても、心積もりはしておこうと思います。
人の評価には惑わされない。でも、独善的にはならない。今瞬さんが「理解に苦しむ」とおっしゃるまさにその「神」からの評価だけに焦点をあてて、生きてゆく。自分にはまだできていないから、えらそうな事はいえないけれど、時々、本当にそれが実践できている人がいて、ああ、いいなあ、ああいうふうになりたいなあ、って思います。

Posted by: nikkou | April 18, 2005 at 08:38 AM

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