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June 09, 2005

『光に向かって咲け』―斉藤百合について

6月7日『眠られぬ夜のために』

「…もしわれわれが時代精神全体と相容れず対立するとしたならば、
われわれの人格を犠牲にしてまで、それに従うほどの値打ちがあるものはめったにない。
むしろ逆に、個人が時代精神に以前と違った方向を与えたという事実は、
これまで少なくないのである。」
(岩波文庫:草間・大和訳)

友人のてじょんさんのお誘いで、常盤台教会の映画上映会に行ってきた。

てじょんさんのホームページ
http://homepage3.nifty.com/taejeon/

二本立てで、一本はマザーテレサ、もう一本は斉藤百合という女性について。

斉藤百合という女性のことを、nikkouはなにも知らなかった。
戦前、盲人の女性の地位向上につとめた人である。
本人も盲人であった。
その生涯は、岩波新書『光に向かって咲け―斉藤百合の生涯』(粟津キヨ著)にくわしい。
戦前の盲女性がどういう暮らしをしていたか、…などと、nikkouは、考えた事もなかった。
というよりも、そういう問いを、思い浮かべたことすらない。
だから、映画を見ながら、はーっとショックを受ける想いであった。

戦前の女性には、結婚して家庭を切り盛りすることが最も重要な仕事であったという。
今のように、オール電化の世ではないので、家事は重労働。
盲人には危険きわまりない、ということで、
家事訓練は最初から受けられない。
ということは、失明した時点で、結婚することは不可能。
裕福であれば、家の奥深くにひっそりとかくまわれ、
貧しければ、女按摩として、温泉街を流しあるき、父の知らぬ子供を生むことも少なくなかった、というのだ。

斉藤百合は、11歳のとき森巻耳(けんじ)・しげ夫妻のクリスチャンホームにひきとられ、
リベラルな家庭でのびのび育ち、
長じては、東京女子大学の一期生に入学。
当時の日本では型破りな盲人女性であったらしい。
まさに「時代精神」に立ち向かった人である。

盲人の女性に家事訓練を受けさせ、教養を身につける私塾をひらき、
自立と、結婚をする勇気を持つよう励まし、
自身、私塾を経営しつつ、4人の子供を育てた。

クリスチャンでもあった。
当時の男性と、百合との信仰のとらえかたの違いにも、「時代」が現れていて面白い。

日本ライトハウス発行の点字雑誌『黎明』に
「盲女子を性の誘惑から守り、異性に心を向けさせぬために、信仰を持たすべし」と書いた岩橋武夫と、
百合の私塾に入りたい、という手紙をよこした17歳の少女に、
「かたい土の下にも春の息吹は感じられます。
ものみなが、芽吹くこのとき、どうして盲女子だけがからにとじこもっていなければならないのでしょう。
勇気を出しなさい。
神様は必要を満たしてくださるでしょう。」
と励ましの返事を書いた百合。

岩橋武夫の文章に、女子であるnikkouは、信仰をなんだと思っているんだ、とむっとするが、
当時の人びとの眼には、百合のほうが非常識に映っていたかもしれない。

「神を愛する者たち、すなわち神の計画に従って召された者たちにとっては、
すべてのことが共に働いて善へと至る、ということを私たちは知っている。」
(ローマ人への手紙8章28節:青野太潮訳)

まったくね、永遠のときを通して人々の営みを見る神のまなざしからは、なにが善とされるのか、
時代に縛られた人間にはわからない、ということもあるんだろう。
nikkouは、ただしく計画に従って働いているだろうか。
ふぅむ、省みるとなんだかちょっと恐ろしい…。

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Comments

第一期生ですか。知らなかった。東京女子大と言うと、伊藤虎丸というおもしろい名前の故人を思い出します。いい男でした。そこの教授でしたが、私の高校のときの担任です。彼のことも書くといろいろ面白いですよ。今度書いてみます。

Posted by: k and s | June 11, 2005 at 08:42 PM

虎丸さん!強そうなお名前。
k and sさんは出会いに恵まれているんですね。
ぜひぜひお書きください。
楽しみにしています。

Posted by: nikkou | June 12, 2005 at 12:50 AM

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