« 『靖国問題』再び~わたしたち孫の世代 | Main | 100万人のキャンドルナイト »

June 14, 2005

『靖国問題』再び~「心のよりどころ」(最終回)

さて、ここで、靖国に集うおじいさんたちの笑顔を思い出す。

若き日に敗戦で価値観を覆され、
子供の世代には、「偏り」を嫌われ、
孫たちには、「あれは間違っていたのだが」という結論から語らねばならず、
口が重くなる人たち。

彼らが笑顔を見せられるのは、
かつて戦争に大義名分をあたえ、
今は「鎮魂」という名目で若き日を振り返ることのできる靖国神社の中だけなのか。

靖国神社の中で、
かなりの年齢を重ねた彼らを見つつ、
nikkouはふと、焦燥感にかられた。
彼らはきっと、当時のありのままの思いや、当時目にし耳にしたことを、
靖国神社だけにそっと打ち明けて、
この世を去ってしまう。
最後の生き証人が失われるまで、あと何年もないだろう。
こうして、靖国神社と密接に関わった人々を失い、
この施設は、たとえば高橋哲哉が『靖国問題』(ちくま新書)で語るように、
実感のない「鎮魂」「平和祈念」という新たな大義名分を与えられ、
外交問題や政治問題として利用され、浮遊してゆくだろう。

nikkouは思う。
靖国に集うおじいちゃんたちが、わたしたちのほうに振り向いて、
靖国にではなく、わたしたちに、その思いを語ることはできなかったのだろうか。
その昂揚感、その虚無感、その悲しみ、その懐かしさを。
そして、わたしたちが、それを「偏り」と断罪せずに受け止めることができていたら。

そう、だれも彼らを受け止めないから、彼らは「靖国」を必要としているのではないか。
彼らを「靖国」に追いやっているのは、わたしたちではないのか。

6月10日付けの朝日新聞投書欄に、65歳の男性の、
遺族は「靖国」しか「心のよりどころ」にできない、という参拝肯定論が載った。
それは、悲しいことだ、とnikkouは思った。

この都会のがらんと大きなこの施設ではなく、
家庭で、故郷で、この施設に集ってくるひとりひとりの戦争の日々について、耳を傾け、
彼らの「戦友」のために、彼らが出会った他国の人のために、ともに祈ることのほうが
彼らと私たちの「心のよりどころ」を見出せるのではないかとnikkouは思う。
「心のよりどころ」は、神殿の中ではなく、わたしたちの関わりの中に生まれるものだ。
それは、目にみえなくとも、はるかに慰めと愛に満ちていないか。

だから、まず、nikkouは、
まだらボケがはじまってしまったわが祖父が、
全部の記憶を天国に宅急便で送ってしまう前に、
きちんと話を聞きにいこう、と思う。
あの施設ほど大きくはないけれど、
nikkouの小さな胸のなかに、おじいちゃんの思いを受け止めたい。

|

« 『靖国問題』再び~わたしたち孫の世代 | Main | 100万人のキャンドルナイト »

「2 眠られぬ夜のために」カテゴリの記事

「5 宗教」カテゴリの記事

Comments

あなたはなんて優しい人なのか。実際そうなのですよ。語りを聞いてくれる日常が、必要なのですね。それはカミなのですが、やはり人であってもらいたいのでしょうね、まず。いい視点で靖国を見ているような気がします。あそこでしか語れない人たち、追い込んでしまったわれら、と言う自分に問題を返す、雄雄しい感じがすばらしいとおもいます。

Posted by: s and k | June 14, 2005 at 09:23 PM

 おじいさんとの体験から、真摯に現実の問題にむきあって、思索する姿勢がとても心地よくよませていただきました。高橋氏の「靖国問題」は僕も今読んでいるところです。
 僕の場合は、直接中国の老人(強制労働の被害者、我が長野県にはこの方たちが造ったダムでいまも電気をつくっている)に話を聞いて、その体験が大きなインパクトとしていろんなものごとを考えたり、行動したりしています。
 初めてですが、トラックバックを送りますので、よければ読んでみてください。

Posted by: ko | June 17, 2005 at 09:53 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91294/4504197

Listed below are links to weblogs that reference 『靖国問題』再び~「心のよりどころ」(最終回):

» 和解と希望―強制連行・長野訴訟(その1) [Life@Asia]
 「もっとドロドロした話でおわるのかと正直おもったけど、まったく違った」。先月 [Read More]

Tracked on June 17, 2005 at 09:54 PM

» 和解と希望―強制連行・長野訴訟(その2) [Life@Asia]
 さて、強制連行の話の続きです。この解決の先には、実はこの東アジアがどうやって危 [Read More]

Tracked on June 18, 2005 at 12:34 AM

« 『靖国問題』再び~わたしたち孫の世代 | Main | 100万人のキャンドルナイト »