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August 17, 2005

いつか、旅立つ日が来たら

8月17日『眠られぬ夜のために』

「『ヘブル人への手紙』4の9について
実際、今日のような騒がしい、全般的に落ち着きのない時代においても、
そのような人びと(神の民)には、
つねに、安息がある。

(中略)

人の一生は、その大部分をまったくむだに過ごすには、あまりにも短い。
良い目的も意味もない楽しみ、そればかりか、悪い結果をさえともなうような楽しみは、
楽しみとはいえない。」


昨日、愛する友人のひとりが、神のもとに旅立った。
バナナが好きなので、バナナ君と呼ばれていた。
nikkouより、二つか三つ若い男の子である。

長く闘病生活をしていたから、こういう日が来る事は覚悟していたし、
実際、知らせがきたときは、
「ああ、ついに」と、心のどこかで思っていた。
でも、やっぱり、胸が痛い。
先週の金曜、顔を見に行ったばかりだったから、まだ信じられないでいる。
本当なのかな。
バナナ君は、本当に、もう、この地上にいないのかな。

バナナ君に出会ったのは、2年ほど前だろうか。
当時通っていたゴスペルクワイアーの一員だった。
背が高くて、おっとりしていて、
でも、歌うときは、朗々と歌った。
料理学校に通っていて、調理師になりたい、と言っていた。

その年の冬、入院したのだけれど、
春には退院して、元気に歌いに出てきた。
でも、握力が落ちてしまって、包丁が握れなくなった、と言っていた。
どんな感じ?と握手を求めたら、
ものすごく大きな手だった。

あとで知ったことだけれど、
バナナ君がゴスペルを歌いに来たのは、
もう、病を患っていて、趣味のテニスができなくなったからで、
かわりに楽しめるものを、ということで、お友達に誘われたのがきっかけだったらしい。

「包丁が握れなくなったときが、一番つらかったね」
…と、これはあとで、バナナ君のお母さんから聞いた。
「でも、調理師がだめなら、栄養士になろう、とすぐに切り替えて、勉強を始めたんだよね」
…と、お兄さんにも聞いた。

バナナ君って、そういう奴だったんだね。
テニスがだめなら、ゴスペル。
調理師がだめなら、栄養士。
そうやって、与えられた環境と時間と、そして命を大切に使う人だったんだ。

バナナ君が、再度入院したとき、nikkouは、言い方はわるいけれど、タカをくくっていた。
若い男の子だ。
また元気になって、出てくるだろう、って。
だから、先月「意識不明になった」と聞いたときは、自分のうかつさに、悔しくて悔しくて、じだんだを踏んだ。

それから一ヶ月、ゴスペル仲間たちや、時々ひとりで、病室に足を運んで、
歌ったり祈ったりした。
いつも、こんこんと眠るバナナ君の傍らには、
綺麗なお母さんとおばさんと、元気な従妹さんがいて、笑顔で迎えてくれた。

7年前、nikkouの妹も、バナナ君のような状態で、ベットの中で一週間眠り続け、
静かに心臓を止めた。
その一週間は、家族みんな感覚が麻痺したみたいになっていて、
ふとだれかが泣き出したり、急にどうでもいい話をしてげらげら笑ったり、
すっかり壊れていたことを思い出す。

だから、バナナ君の家族が静かで、強かったことが、
本当のことをいうと、nikkouは、とてもうらやましかった。
バナナ君がきちんと生きてきたのは、
この家族の一員だったから、なのかもしれない、と思った。

一時は、本当に危篤状態だったのだけれど、
病院の方が言うには、「奇跡的」に呼吸が戻った。
そっと、自分の肺で息をして眠りながら、
バナナ君は、nikkouに、いろんなことを教えてくれた。

明日、バナナ君のお別れ会に、ゴスペル仲間たちが歌いに行く。
「Oh Happy Day」を歌おう、と連絡がきた。
「喜ばしき日。イエス様が僕を清めてくれたその日」という歌。
結婚式や洗礼式で歌われる歌だけれど、
そうか、天国に旅立つ日も、
喜ばしき日なのか。

でも、どんな顔で歌っていいのか、わからない。
神様。
本当に、今日は、喜ばしき日、なのでしょうか。
頭では、分かるのだけれど、
心が、痛いのは、どうしようもないのですけれど。

ああ、でも神様。
もし、わたしが天国に旅立つ日が来たなら
そう、もしそれが今夜であっても、
きっと「喜ばしい」とは思うのです。
主よ、あなたには、いつだって、会いたいと思う。
けれども、この地上にまだ生きねばならぬ家族や友人たちを思うと、
やはり、胸が痛い。

主よ。
だから、この地上にいるひとりひとりは、どうか、あなたが慰めてください。
バナナ君の家族を、お守りください。

もし、nikkouが旅立つ日が来たなら、
どうぞ、nikkouの家族を、愛する人らを、あなたがお守りください。
アーメン

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Comments

日本人の作家で、教科書に
「人生は、何事かを為すにはあまりに短い。
 何事かを為さないのなら、あまりに長い」
ってのもあったような。

Posted by: Emotional YK | August 18, 2005 at 12:18 PM

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