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November 02, 2005

おとうさんとぼく

『眠られぬ夜のために』第一部

「11月1日

われわれがこの人生に召されたのは、それに興味がなくなったら、勝手にこの人生から出て行ってよいためではなく、むしろ、神が適当なときにわれわれを呼びもどすまで、自分や他人にとって有益な生活を営むためである。」

(岩波文庫・草間・大和訳)

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ドイツには「おとうさんとぼく」という有名なマンガがある。
作者はe.o.プラウエン。
ドイツに旅行するとき買ったガイドブックにも紹介されていた、ドイツの国民的マンガである。
日本では、青萌堂から「ヒゲ父さん」シリーズとして刊行されている。

せりふのないシンプルなタッチの4こまから8こまくらいのマンガで、
「ぼく」の遊びや本に「ぼく」より夢中になっちゃったり、
宿題を手伝ったら間違いだらけで先生にしかられたり、
「ぼく」のおしりをぺんぺんしようとしたらズボンのほつれに気づいて、そっちのけで繕い物をしちゃったり…と、とかく、「ぼく」を愛してやまない、愛すべき「おとうさん」が、ユーモラスに、そしてポエジーに描かれている。

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だから、作者のe.o.プラウエンは、ナチスに捕らえられて、自殺した、ということを知ったときは、本当に驚いた。
最近の人だと思っていたのに。

当初、ナチスの風刺画を描いていた彼は、当局にねらわれるようになり、
それを逃れて、変名で「おとうさんとぼく」を描く。
その後、反ユダヤ的なマンガを描くよう圧力を掛けられても屈せず、とうとうナチスに捕らえられて自殺した、というのである。

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これを知ったときのnikkouの気持ちを、言葉にあらわすのは難しい。
んー、なんと言ったらいいんだろう。
つらいなあ…、と、思い、そして、語弊を恐れずに言えば…きっと彼には祝福がある、というか、なんか、そんな思い、がした。

nikkouは、同世代のご多分にもれず、戦後教育の中で、戦時中に圧力を掛けられて殺された人の話を、ずいぶんと聞かされてきた。
幼いころのnikkkouは、そういう話に触れるたびに、
「死んでしまったら、元も子もない、苦しい死に方をするよりは、主義をまげてでも生き延びるべきだ」と思ったり、
「いや、命より大切なものがある、やはり正義を貫くべきだ。」と思ったり、
両極の「べき」論にあちこち揺れてきた。

でも、e.o.プラウエンの話を知ったときは、なんだか、そういう「べき」論ではない、複雑な思いがした。

こんなにも、愛に満ちたマンガを描く人だ、もし節をまげて、えげつないユダヤ人蔑視のマンガを描いていたら、戦後、どんなに良心の呵責に苦しめられたか分からない。
でも、自殺するとき、彼は、「ああ、これでいいんだ、自分は正しかったんだ!」と、胸を張って死に飛び込んだだろうか。「自殺」ということの暗さを思うと、やはり、苦しかっただろうな、と思う。そんな時代に生きたことに、そして、そんな時代にどうしても時局におもねるマンガを描くことのできなかった「不器用」な自分に、深く絶望したかもしれない。

正義を曲げて生き延びても、正義を貫いても、苦しい。
そんな状況におかれた彼の「自殺」は、今夜のヒルティが言う、「人生に興味がなくなった」ゆえの自殺ではなく、「処刑」に近い気がする。

でも、nikkouは思うのだ。
極限状態を生き延びて、その後良心の呵責に苦しまれる人生であっても、主は、赦してくれるのではないか。
また、正義を貫いて、命を失う人生であっても、主は、それをいとおしんでくれるのではないか。

いま、プラウエンからわたしたちの手元へ遺された、愛らしいマンガ集に、感謝する。
プラウエンの最期を、主が赦し、その戦いの傷を癒してくださいますように。

nikkouはいつか、主のみ国でプラウエンに会えたら、伝えたい。
あなたの苦しみを、わたしは理解できないかもしれないけれど、
でも、あなたのユーモアには、いっぱい笑ったよ。
とっても楽しかった。
すてきなマンガをありがとう、って。

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Comments

涙が出ました。出勤前の、飲みグスリ、です。常備薬にしたいものです。kkksss

Posted by: kkksss | November 02, 2005 at 09:14 AM

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