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July 28, 2006

リトルバーズ

『眠られぬ夜のために』第二部

「7月26日

『イザヤ書』第55章(さあ、かわいている者は、みな水にきたれ。金のない者もきたれ。…わたしによく聞き従え。そうすれば、良い物を食べることができ、最も豊かな食物で自分を楽しませることができる。耳を傾け、わたしにきて聞け。そうすれば、あなたがたは生きることができる。…)。
ここに言われていることがもし真実であるならば、この世にはどうしてこんな多くの社会的悲惨や、それについてのこんなに多くの嘆きがあるのだろうか。しかし、嘆くよりまえに、ここに言われることは、試みにやってみるだけの甲斐があることではないだろうか。」

(筑摩叢書:前田敬作訳)

先週末、「東京映画平和祭」を観てきた。
ロビーに出ていたアヤシサ満載のブースや、
たった一日に複数の映画を各一回だけ上映するというやり方については、
誘ってくれた「一粒のぶどう」のブログに譲るとして、
わたしは内容についてちょろっと書きたい。

映画祭で鑑賞したのは戦時下のイラクをドキュメントした「リトルバーズ」と、アメリカ資本に蹂躙されていく小さな南の国を描いた「ジャマイカの真実」の二編。
いずれも衝撃的ながら、とくにショックだったのは「リトルバーズ」であります。
一時、連日ニュースで伝えられていたイラク戦争の戦死者の数や、デモ隊のひとりひとりが、
にわかにリアルに迫ってきました。

Image1
アメリカ軍の空爆前夜、わいわいとにぎやかにお店のシャッターを閉じるひとびと。
カメラマンを見つけて、
「日本は好きだよ。ヒロシマ・ナガサキを知ってる。でも、今度の戦争で日本はなぜアメリカの味方をするんだ?なぜなんだ?」としきりに聞いてくるおじさんたち。
こちらはイラクのことをなーんにも知らんのになあ、
このおじさんはなんで日本が好きだなんて言ってくれるんかなあ、
となにやら申し訳ないような気持ちで眺めていると、
次のシーンには、その商店街が爆弾でぼこぼこに襲われているのである。

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さらにカメラは、街中の病院に入る。
ちいさなちいさな女の子の上に覆いかぶさって泣きじゃくる若いお父さんに出会う。
アリ・サクバンさん、31歳。
アメリカ軍の空爆で3歳、5歳、7歳の子どもたちをいっぺんに失ったという。
カメラはしばらくこのお父さんを追うことになる。
「ここは宮殿でもなんでもないのに」と憤懣やるかたない表情で破壊された家を見せ、
その朝、どんなに子どもたちがかわいらしかったか、
そこへどんな様子で爆撃が襲い、
どのように子どもたちがふきとんだか、
といういうことを、繰り返し繰り返し話す。

アリさん自身、湾岸戦争でクウェートに駆り出されたことがあるという。
兄ふたりはイランイラク戦争で死んだ。
そして子どもたちは今回の戦争で死んだ。
たくさんの戦争をくぐってきてなにがあったか、なにもない。
もうこりごりだ。
「人間は戦争するために生まれたんじゃないはずだ。真理や知識や倫理を追究するために生まれたはずなんだ、そうじゃないのか」と言う彼は、おそらく相当の知性と理性を備えた人なんだろうと思う。
そんな彼が、アメリカ兵を撃ち殺したい、と銃を取り出してくる。
アメリカ軍にお百度を踏んでも、破壊された家は補償されない。

ひるがえって、アメリカ軍の若い兵士にカメラが向くと、
「多少の犠牲は仕方ない。わざとじゃないんだ、誤爆なんだ。今回の戦争で、イラクの人たちは、フセインから解放されたじゃないか、よかったじゃないか」とあっけらかんと笑顔を向ける。

フセイン大統領の横暴さについてくりかえし宣伝されていたから、世は勧善懲悪、悪人が駆逐されて、ま、よかったじゃない、という気にならんでもない。…でも、頭痛を訴える人のあたまを鉈でかちわって「頭痛はなくなった、よかったね」みたいな話の気もする。

イザヤ55章は真実か、とヒルティが書いたのは、第一次世界後であり、第二次世界大戦前夜である。
「イザヤ55章の真実」を、今もって、人間は発見できないのだろうか。
nikkouも具体的にはどうしたらいいのか分からないけれど、
今回のイラク戦争は、ベストでもベターでもなかった、とは思う。

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Comments

nikkouさん、リトル・バーズ、淡々としていてだからこそ底抜けに怖い映画でした。

彼らの話を聞いていると、確かにフセインはひどいことをしてたくさんの人間を密かに殺していたようですし、戦争になると目に見える形で大勢の人間が殺される。
どちらもやめさせなくてはいけないこと。加害者にならずに被害者を救う方法が実行できたなら、と思います。

Posted by: ゴトウ | July 29, 2006 at 06:50 PM

ゴトウ姉、さっそくサンキューです。

>加害者にならずに被害者を救う方法

ねー、知恵を絞れば、きっとあるはずだよねー。
ベルリンの壁だって、流血せずに壊れたし、チャウシェスクはちょっと大騒ぎでその後もたいへんそうだけれど、すくなくとも頭上から爆弾を落とさずに解決したし。
やっぱり、石油ですかねー。
恐るべきはマモンの神信仰だなあ、って思うわ。

Posted by: nikkou | July 30, 2006 at 09:49 PM

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