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August 23, 2006

ナルドの香油

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『眠られぬ夜のために』第二部
「8月23日
『マタイによる福音書』26章6節~14節(さて、イエスがベタニヤで、らい病人シモンの家におられたとき、ひとりの女が高価な香油を入れてある石膏のつぼを持ってきて、イエスに近寄り、食事の席についておられたイエスの頭に香油を注ぎかけた。…』

(中略)

この物語は、・・・われわれがたえず新しく主の立派な手本によって
ありがたいと感じる宏量さをしめしている・・・。
(略)
イスカリオテのユダは、その反対で、こころの狭い、いやしいキリスト者であった。(以下略)」

(筑摩叢書・大和・草間訳)

(Magdalene Washing Christs Feet by Sir Frank Dicksee)

ヒルティはユダを「キリスト者」と呼んでいる。なるほど、ユダもクリスチャンの一類型なのか。

本日ヒルティが取り上げている箇所は、nikkouが以前から個人的にとても好きだったところ。
イエスがらい病人シモンの家でお話しているところへ、ひとりの女性が入ってくる、という、いわゆる「ナルドの香油」と呼ばれるシーンである。

以前聞いた話で、当時のユダヤ社会では、男性たちの宴席に女性がひとりで入ってくるというのは、ありえないことだったそうだ。しかも、ユダヤの人々は、床にごろごろ横になって食事をするらしい。だから彼女は、ごろごろしている男の人たちを踏み越え、またぎ越し、イエスの元へやってきたわけである。
そして、みんなが呆気にとられて見守るなか、やっぱりごろっと横たわっているイエスの頭の上に香油をそそいだ。ルカ福音書ではさらに、イエスの足もとに回ってその上に涙をそそぎ、長い髪の毛でぬぐったことになっている。
面白いのはユダを筆頭とする男たちの反応である。彼らは口々に彼女をこう非難する。
「なんのためにこんな無駄遣いをするのか。それを高く売って、貧しい人に施すことができたのに。」(8~9節)

ここからはnikkouの想像だが、
これはイエスの最晩年のころのお話だから、たぶん、イエスの周囲にいたひとたちは、イエスの性格や考え方がだいぶ分かってきていて、
「女がこんなところにでしゃばってくるな」とはいえなかったんだろうと思う。
イエスは男女同権主義者だからね。
でも、むかついたから、イエスが以前言った言葉で批判した。
そう、以前、イエスはお金持ちの男に対して、こういっているのである。
「もしあなたが全き者でありたいと思うなら、行って、自分の財産を売り払って、貧しい者たちに与えなさい。」(マタイによる福音書19章21節)
だから、ここでの男たちの批判は、道徳的にも、イエスの今までの考え方からしても、とっても正しい。
ところが、イエスは意外なことを言うのだ。
「なぜ、女を困らせるのか。わたしによいことをしてくれたのだ。」(10節)

これもnikkouの想像だけど、イエスは、決死の覚悟で男たちを踏みまたいできた女の顔色をしっかり読んだんだろうと思う。
「こいつはなんかあるぞ」ってね。
だから、以前お金持ちの男に言ったことと矛盾するけれど、「彼女はよいことをした」といった。
イエスは、この女も、お金持ちの男も、たぶん、とっても愛していたんだと思う。だから、本人にとって一番必要なことはなにか、鋭く見抜いたんだと思う。

イエスはいつもケース・バイ・ケースで、たぶんわざとじゃないんだけれど、行動の規範というか、道徳的なルールをつくることを拒否しているような気がする。
でも、行き当たりばったりではなくって、ちゃんと筋が通っている。
以前、クリスチャンの兄貴が言っていた。
「イエス様の言動って、時々矛盾するんだよね。
でもね、『愛の人格』ということに関しては、ビシーッとゆるがないんだよ。」

「愛」だの「正義」だのって、声高に主張するとうそ臭い。
「クリスチャンは貧しい人に施しをするべし」みたいなルールを作って行動すると、血が通わなくなる。

だから、精神的な規範はゆるがず持っていて、
人間関係の中では、自然体に、柔軟に行動すること。
nikkouが以前から目標にしている「気さくで凛とした人」。
そのお手本は、やっぱり、イエス・キリストである。

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Comments

二度じっくりと読みました。魅力的な深い内容ですね。すぎ

Posted by: kkss | August 25, 2006 at 06:57 AM

考えさせられる話ですね。
我が身を振り返ると、恥かしくなります。

Posted by: y.yamaguchi | August 26, 2006 at 12:04 AM

>杉祖父

きっとイエス様が深いんですよね。

>Yamaguchiさん

ほんと、聖書の記事はちょっとそっけないんだけれど、何度か読んでいると、「ん?」ってなるんですよ。で、わが身に照らして恥ずかしくなったり考え込んだり。面白いですよ、聖書(特に福音書)って。

Posted by: nikkou | August 26, 2006 at 12:28 AM

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