« 結局最後は「啓示」なんだよね | Main | キリスト教式結婚式 »

September 02, 2006

本棚

『眠られぬ夜のために』第二部

「9月3日

福音書の真実性の問題なんかに苦労しないがよろしい。(中略)
福音書のあいだの食い違いは(といってもむろんささいなものだが)、それがかえって、福音書の著者がそれぞれほかの著書を単に模写しようとしたのではなく、めいめい自分の記述のために独自の原資料を持っていたことをあきらかにしている。このような原典が、その後、筆写者や翻訳者、その上あらゆる修正者など、いろいろな人の手をくぐったことは、疑いないことであり、また、ところどころにその明らかな痕跡さえ認められる。このことは、ただ全然機械的な霊感説に対して警告するにすぎない。こんな霊感説は、霊感とはどんなものかを、自分の経験で多少とも知っている人には、とうてい納得しがたいものであろう。あたかもダンテがあるきわめて美しい詩句で、自分について証しすることができたように。

『わたしは思いをこらして愛の息吹に耳をすまし
そのささやきをまことと知り、
それを書き写すのみ、わがうちより創るものはない。」

神の恵みをうけて、そのことのために「召された」福音記者も、ことごとくこのような仕事をするものである。しかし批判学者にはこのことがわからない。(以下略)」
(岩波文庫・草間・大和訳)

ヒルティは、「聖書の真実性の問題」をこねくり回す学者に対してとても批判的。
その一方で、「霊感説」にもクールに距離を置いている。
たしかに、聖書には複数の原資料があっただろうし、
書き換えも行われただろう。
でも、機械的な霊感説がいう「霊感」じゃない、本当の「霊感」をもって書かれた書物であることはまちがいないよ、って。
「霊感説」というのは、聖書は、聖書記者が「霊感」でもって神の言葉を一字一句誤りなく書き取った書物、という説である。

Dscn0027
nikkouは聖書学者が緻密に歴史や写本研究をして、よりリアルなイエス像をたどる、という読み方が、けっこう好きで、荒井献とか加藤隆とか、わりと一生懸命読んでいるほうだと思う。過激な聖書学者として名を知られている田川健三の『イエスという男』は旧版新版両方持っているけど、未読。ちょっと読みかけて、著者のあまりの剣幕にへきえきしてほったらかしてしまった。そこが田川健三の味なのかもしれないけどさ、怒りすぎ。

ただ、礼拝やメッセージなんかでは、あまりに研究熱心で、あじけなーくなっている説教より、素朴な信仰告白のほうが好きです。そのバランスがむずかしいのでしょうけど。

弊社から、ある著名な聖書学者の本が出ることになった。著書を読むかぎり、信仰があるのかないのかよくわからない、乾いた筆致の人である。エレベーターの中で、担当する同僚(とっても若い男子)に会ったので、「どんな人?」と聞いてみた。「すごい素敵な老紳士ですよ」とのこと。「だけど、時々、意味不明なことを口走りますけどね」「たとえば?」「『やはり、人は、主のみこころに従って生きてゆくのが、一番幸せですね~』とか。」
・・・nikkou思わず苦笑。乾いた筆致の聖書研究は、ノンクリスチャンの男の子を面白がらせはするけれど、「主のみこころ」うんぬんは結局「意味不明」なのね。もちろん、そこんところは、言葉じゃなくて、ヒルティ言うところの「霊感」だもんね。むずかしいやね。

|

« 結局最後は「啓示」なんだよね | Main | キリスト教式結婚式 »

「2 眠られぬ夜のために」カテゴリの記事

Comments

hi hi hi hi. da ne.sugi

Posted by: kkss | September 03, 2006 at 10:17 AM

田川健三先生、インターネットで荒井献先生のことをぼろくそに書いてるのを見つけて私もびっくりしてしまいました。何であんなにいつも怒ってるんでしょうかね? キャラクター立ってますね。
聖書学者の先生、どなたなんでしょう? 出版される頃また教えてください。自らの信仰を決して見せることなく、地道に聖書世界の探求本を出版し続けられた故山本七平さんもこんな感じの方だったのかな、と想像しています。

Posted by: ゴトウ | September 03, 2006 at 11:46 PM

>杉祖父

ふふふ、ですね。

>ゴトウさん

キャラクターだ。ほんまに。

ちなみに、「聖書学者」はK籐先生。
刊行はたぶん、一年くらい先。

山本七平さん、最近、復刊をあちこち見ますねー。nikkouもじっくり取り組みがてら、一冊くらい復刊を手がけてみたいな。

Posted by: nikkou | September 04, 2006 at 10:43 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91294/11733710

Listed below are links to weblogs that reference 本棚:

« 結局最後は「啓示」なんだよね | Main | キリスト教式結婚式 »