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September 04, 2007

内村鑑三「非戦論」

『眠られぬ夜のために』第一部

「9月6日
…このような謙虚は、重い苦難の時期を経てはじめて、人間の内部に生じるのである。…」
(前田敬作訳:筑摩叢書)

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毎月、第一土曜日は、「内村鑑三読書会」で、
今は「非戦論」(岩波書店)を読んでいる。
9月1日の読書会は、nikkouがプレゼンターでした。
まるで学生時代のゼミみたいに、担当した箇所をまとめて、資料をあつめて、レジュメを作って、発表するのだ。
学生時代は、めんどくさかったそんなこんなが、
大人になると、楽しいったらありゃしない。

で、9月1日、nikkouがあたったところは、1904年4月、まさしく日露戦争がはじまったころに発表された文章。

彼が非戦論を唱え出したのは、日露戦争から。日清戦争のころはまだ、ぐらついている。
でも日露戦争のときは、もう、きっぱりと非戦、そして、無抵抗主義です。

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時代背景を見ると、そんな文章を発表するのは、すごい勇気がいったろうと思います。
日清戦争のあと三国干渉で遼東半島をうばわれた恨みをはらさずにはいられまじの「臥薪嘗胆」戦争論から、
このままほっとくとロシアに国をのっとられるぞ、という「防衛戦」論、
そして、朝鮮半島侵略にいざ臨まんとする「経済」的観点からの主戦論…、
もう、国中がぐつぐつに煮え立った状況だったろうと思うのです。

ただでさえ、その10年前には、「不敬事件」でもって、家に石を投げ込まれるわ、奥さんは過労で死ぬわで、苦渋をなめていた内村鑑三、どうして、そこで非戦論が言えたのか。

現代でも、日露戦争っていうのは、評価が高かったりする。
たとえば、日本が、初めて白色人種に勝って世界の有色人種に勇気をあたえた良い戦争でした、とか、まだ日本に武士道が生きていた古きよき時代の戦争でした、とか。
そして、内村の非戦論は、「そういう意見も許容していたくらい、日本は表現の自由があったのです」という文脈で語られていて、本文自体は、ちゃんと検討されていない気がする。
Nikkouも、今回はじめてちゃんと読んだよ。

読みつつ、なんだか、それまで停止していた思考が動き出すというか、固定観念ががくん、がくんとはずされる、というか、そういう感覚がする。

それは、内村の文章が論理的で感動的だから、ではなく、その逆。
事態の進行のなかで、どう考えても戦争はイエスの考えと違う気がするんだけど、
非戦論はどうも分が悪い、
いったいどうしてなんだろう、どうすりゃいいんだろう、という内村の苦しみに、
それまで、ついうっかり乗っかってしまっていた「日露戦争=よい戦争」という文脈から、
ぶるん、と振り落とされてしまうのだ。

振り落とされて、見えてくる世界には、ちょっと戸惑う。
その世界を、うまく言葉にできない。

日露戦争に負けていれば、内村の非戦論も、理解しやすかったかもしれない。
日露戦争の勝利後、内村はますます分が悪くなったろうな、と思う。
そんななか、彼は、イエスのこの言葉をひく。

「柔和なるものはさいわいなり、その人は地を嗣ぐことを得べければなり」(マタイ福音書5章6節)


そして、こんなこともいう。

「悪を悪とみとめてやまざるの結果、悪人に殺されることはあるかもしれない。」(無抵抗主義の教訓)

命がけの、非戦論。いや、命も惜しくない非戦論。
「たぶん、彼は終末から世を見ていたんだろうね」と読書会のメンバーのK兄がいい、「そうだね、きっと」とS兄が応じる。

終末観がなくて、
死んだあとなど何もかも、あとは野となれ山となれ、という世界観だったら、
日露戦争=良い戦争なんだろう。
終末からみれば、
まだ、日露戦争の、本当の評価は出ていない、ということか。

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Comments

楽しそうで何よりです。読んでいると、私もまた出席したくなりました。杉山

Posted by: kkss | September 11, 2007 at 09:43 AM

ぜひぜひ~
今読んでいるのは岩波の内村鑑三選集2『非戦論』
次回読むのは「戦時の事業」から「基督教の趨勢」までです。

10月6日(土)午後4時から5時半
今井館聖書講堂にて
プレゼンターは、大学院生のH君。

Posted by: nikkou | September 11, 2007 at 10:52 PM

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