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January 09, 2012

愛は老いることがない

1月9日 「……愛は、ほかのどんなものにもまして、ついにそれをわが物とした人間に力だけでなく、英知と忍耐心をあたえる。というのは、愛は、永遠の存在であり生命であるものの一部分であり、このものは、すべての地上の事物のように、老いるということがないからである。」 (『眠られぬ夜のために』第二部 前田敬作訳)

あけましておめでとうございます。
2011年はたいへんな一年でありましたが、
自分にとっては、様々なことを考えさせられた年でもありました。
一生の課題を与えられたといっても過言でないかもしれません。
今年も、それこそ「一生懸命」考え、学び、進みゆきたいと思います。

さて、
お正月は、夫の実家におりました。
夫の祖母宅で、おせちを御馳走になりつつ、
祖母より、自選歌集を頂戴しました。
これが、なかなか素晴らしい短歌で、
ああ、文芸の道には、こういう方法があったんだなあ、とつくづく感動いたしました。

…大きな声では言えませんが、
じつはnikkou、子供のころ、歌人になりたかった。
そこで、当時有名歌人が教授をしておりましたW大学に入り、
4年間、仲間たちとともにあれやこれやとミソ一文字をひねっておりましたが
結局、文芸なり芸術なりってのは才能なんだなあ、という、ごく当たり前のことに気づいて、断念。
ただ、「読む」能力のほうは、努力で磨ける気がする、と
文学研究者か、編集者か、国語教師になるか、の三叉路にしばし悩み、
やがて一番「面白そうだー」と感じた編集者の道を選んだのでした。

というわけで、
作歌からは遠ざかって十数年、
すでに、そんなことに手を染めたことさえ忘れかけていたのですが、
今回の祖母の歌集を読んで、
若いころには思いもよらなかった「歌の役割」に気づかされたのであります。

たとえば、亡くなった友人のこと、
たとえば、子供や孫の成長、
たとえば、老いのこと、
たとえば、感動した歌や詩の本歌どり、
たとえば、庭に咲いた花のこと……

nikkouは若いころ、このテの歌を、
正直、バカにしておりました。
なにせ、加藤次郎、水原紫苑、穂村弘、桝野浩一といった若い歌人がばんばん出ておりまして、

ハーブティーにハーブ煮えつつ春の夜の嘘つきはドラえもんのはじまり(穂村弘)
洪水だあ、とはしゃいでいたのは私です むろんヨーグルトになっちまいましたが(加藤次郎)
真夜中の電話に出ると「もうぼくをさがさないで」とウオーリーの声(枡野浩一)

なんて歌をばんばん発表していたころであります。
私小説よりはファンタジー、あるいは純文学、あるいは大河ドラマ、
短歌1首で小説1冊分の、いや、映画1本分の創造性を、
直立せよ一行の詩(佐佐木幸綱)、
おまえはあかまんまの歌を歌うな(中野重治)
と、それはそれは力んでいたのであります。

祖母はアララギ派の先生に師事したとのことですが、
アララギ派というよりは、いくぶん「未来」とか「中部短歌」とか、そのあたりを思わせるような
若々しくユーモアのにじむ詠みぶりでありました。

しかしなによりnikkouが感動したのは、
本人を知っている人間だけが、共有できる感覚を、きちんと、いや見事に、言葉でもって、いまここへつなぎ留めているということでありました。
とくに、我が夫や、その弟を詠んだ歌、

七草の粥つくるとふ鳥取にひとり住まひの男の孫が
フロイトを熱く語れる孫のいて死ぬのはずっとあとからにしよう


などというものを目にすると、
おもわず、胸にぐっときてしまう。
お祖母ちゃんの愛がひしひしと、ひたひたと、あふれております。
ぶっちゃけ、こうしたものは、商業出版としては価値のない作品なのでありますが、
家族の関係の中では、Pricelessであります。
祖母と、ともに歩んだ家族との、
生活、いや、命が、
深く深く掘りこまれた詩であります。

商業出版にのらない、こうした美しい詩と、そこに刻まれた命は、
きっと、この日本中にあふれているんだろうな、
短歌って、それができるんだな、
それって、ありだな、
いや、それって、素晴らしいな、
大きく言うなら、一回性の命、地に足のついた生活、ヒルティの言葉を借りるなら、「老いることのない愛」
そんなことに、初めて気づいた新春でありました。

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Comments

時々訪問させていただいています。
歌人となることを志しておられたとのことで、納得しました。このブログの記事それぞれが歌のような冴えがあると思っておりました。

Posted by: AJT | March 20, 2012 at 08:24 PM

AJTさま

御訪問感謝します。
そして、ごぶさたしておりまして、すみません。
もう、仕事が忙しくて忙しくて、しばらくの間、自分のブログのページも開かずにおりました。

春も到来して、仕事も一段落、
また歌うように、ヒルティと聖書について、つづってまいりたいと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。

Posted by: nikkou | April 04, 2012 at 11:03 AM

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