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July 22, 2012

捨てるにも、時がある

『眠られぬ夜のために』第二部 7月20日 あなたが一旦神と親しくなり、また神とのあいだに目標が完全に一致するような間柄になるならば、とりわけ、正しい適度な仕事や適当な読み物を探し求める必要はもはやなくなる。実際、そういうものを求めていると、人間は得てして過度におちいったり、時宜を誤ったりしがちである。神と親しく交われば、仕事と読み物の両方とも、いつも不思議に適当な時に授けられるであろう。 一体に、計画を建てるということは、何の役にも立たないことが多いものだ。待つこと、そして神のさずけたまう機会に注意を怠らず、与えられたらその機会をすばやく、すすんで、十分の心構えをもってつかむこと、これが成功をおさめる道である。(岩波文庫 草間・大和訳)

われわれの住むマンションは、3LDK、夫婦二人には十分すぎる広さである。
その一室を、書籍置き場にしていたら、だんだん、季節物の家電だの、家電の段ボールだの、備蓄用の水だのが積もり積もって、「納戸」状態になってしまった。
この部屋を自分の書斎やギターの練習室にしたら、どんなに生活が充実するだろう、と思い立ち、
ゴールデンウィークから、先日の連休にかけて、およそ2ヶ月間、「納戸をnikkouの書斎に改造」計画を実施いたしました。

で、こんな感じに。
(Before)

Before1

Rimg0532_2

(After)

Rimg0692_2

本は半分近く減らし、
むき出しにしていたキーボードは、ちゃんとしたキーボードケースに収納、
カーテンも明るく、防音性のあるものに替え、
デスクは、相方が使っていたものをこちらに移しました。

一番おおごとだったのが、やはり、本を減らすこと。
とりあえず、本棚からすべての本を引き出して、床に並べてみました。
3列に並べていたものだから、一番奥の本なんて、それはそれはかわいそうなことになっていて、
天には虫の糞、湿気で波打ったり、ページが折れていたりと、まさに文字どおり「死蔵」。
やはり、減らして全体に眼が届く分量にしなければなあ、ということで、
選別することにした。

これが案外、たいへんな作業でありました。
流行の小説や、あまり実用的でなかった実用書なんかは、古書店行きの箱に。
いつでも手に入るうえに、傷んでしまった文庫本や新書は、古紙回収に。
困ったのは、
「きっと今後読みかえす機会は少ないけれど、思い出深い本」の存在でありました。
これが、ものすごくたくさんある。
一番悩んだのは、かつて一生懸命コレクションした岩城宏之氏のエッセイ集。
岩城さんは、nikkouが編集者をめざした一番のきっかけになった人、
人生を変えた人、といっていい。
学生時代にアルバイトをした出版社で、岩城さんのエッセイ集を編集する手伝い(といっても、コピーをとったり、おつかいをしたり、という程度)をしたのがきっかけで、
世の中には「編集者」という職業があって、こういうことをするのだ、と強い感銘を受けたのでした。
そこで、岩城さんが書いたありとあらゆる本(対談集も、ブックレットも)を集め、いつか岩城さんの担当編集者になることを目標とした。
しかし、もはや岩城さんは、この世にいない。
わたしはとうとう担当編集者になれなかった。
そして、わたしの仕事へのモチベーションも、もはや別のところに移ってしまっている。
ならば、もう、岩城さんを卒業するべきではないのか。
それとも、初心を忘れぬために、残しておくべきか。
数日もんもんとして、やがて、1冊だけ、例のアルバイトでお手伝いした本だけを残し、あとはすべて、古書店行きの箱に詰めたのでした。

ほかにも、悩んだ本はいくつかあったけれど、
片付いたあと、思い出して胸が痛むのは、岩城さんの本のみ。
一冊一冊が惜しいのではなく、
「岩城さんの本コレクション」というかたまりを手放してしまったことが、
ただただ、さびしいのであります。

でも、たぶん、今でなければ、手放せなかったと思う。
就職から定年まで35年として、キャリアの約3分の1まで来た、という今の時期に、
どの方向に進むか、そのためにどのような知識や技術が必要なのか、整理すべき時たっだのかもしれない。

そう言い聞かせながら、デスクの前に座ってこじんまりした書棚を眺める今日この頃。
一冊だけ残した岩城さんの本は、一番目につくところに置いている。

「伝道の書(コヘレトのことば)」のこんな節が思い起こされる。


何事にも時があり
天の下の出来事にはすべて定められたときがある。
生まれる時、死ぬ
植える時
植えたものを抜く時
殺す時、癒す時
破壊する時、建てる時
泣く時、笑う時
嘆く時、躍る時
石を放つ時、石を集める時
抱擁の時、抱擁を遠ざける時
裂く時、縫う時
黙する時、語る時
愛する時、憎む時
戦いの時、平和の時。
(3章1〜8節)

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